公示前から、主にネガティブな意味で注目されていたのはワタミ創業者で元会長の渡辺美樹氏だ。
自民党支持者がほとんどのネット右翼層でも公認されては困るという論調が多かった。
反韓、タカ派で売っている2chまとめサイトでも、この事ばかりは自民党に反していた。
反対がネットで多く聞かれた理由はブラック企業の経営者ということと、独特の教育観や職業観に疑問を持つ者が多くいたということ。
だが、ネットでの評判とは裏腹に、最後の最後で滑り込み当選を決めた。
10万票で比例区で当選したわけだが、これはかなりギリギリでの当選で
同じ票数であれば選挙区では厳しいだろう。
比例区で自民党か自民党の人に投票した人が多かったために、議席数ふえておこぼれで当選した位置ではあるが、
それでも渡辺美樹を含む比例名簿に載っている候補を信任して自民に投票したという事を考えれば、国民の支持を得ているとは言えなくもない。
ネットの声はどこへ?
ネットでの労働者の声はどこへ消えたのだろう。
共産党が躍進したことをみても、おそらく渡辺氏の公認に反対した層のいくつかは共産党に投票した可能性があるが、
それにしてもTwitterつぶやかれ、2chで騒がれていたほど渡辺氏の得票には影響していなかったかのように思える。
実際問題、Twitterやニコ動、2chはそれほど大勢には影響しないのだろう。
これらの問題に敏感な層は20〜40代で男性のほうがやや多い都市部に住む一部の層ではないか?
多くの人がSNSなどをやっていると入っても、やっている人が若者の半分以上ってことはないだろうし、その中でもほとんどの人は政治ツイートなんか無視しているのじゃないか?
それに若者の投票率がいくら上がったとしても、シニア層はもっとも人数が多い。
そしてシニア層には経営者も多く、また自分が労働をするわけではないのでそれほどブラック企業政策について興味はないのだ。
そしてその層はほとんどネットを見ないだろうし、逆にテレビはみるわけで
無名より悪名が勝るという事で当選したとみることもできる。
この現状では若者がいくらムーブメントを起こそうとも、覆すのは難しい状態だ。
ちなみに僕は少なくとも労働者について代弁してくれる党ということで、選挙区も比例も共産党にした。
渡辺氏当選はかえって良い面がある
ブラック企業対策についてまだ希望はある。
それは共産党の躍進である。
もちろん共産党には問題も多い。
だが各政策についてブレずに媚びずに与党に反論し続ける野党としての存在感は充分にある。
そして今や渡辺氏はブラック企業のアイコン的存在になっており、野党としては追求しやすい対象となる。
そのことによりブラック企業の現状について大衆の耳目に触れる機会が今後増えてくると期待される。
ブラック企業の議論が活発になり、そして労使間の問題だけでなく
経済や社会における重大な問題であると大衆が認識しやすくなるかもしれない。
渡辺氏批判でやっていはいけないこと
今後、ブラック企業に対して危機感を覚える若い労働者層が多く自民党の労働者対策について反論をいうようになってくるだろう。
だが、渡辺氏に対してのオブジェクションについて、安易な揚げ足取りはよしたほうがいい。
渡辺氏は日頃から、
・24時間365日働け
・昼食を食べられるのは二流
・一年生ですから、雑巾がけからやらさせて頂きます
ということを発言していたが、それにつて
「言ったんだから絶対にやれよ!」
ということは逆効果だ。
渡辺氏はストイックで、正義感が強く、努力家で仕事思いの人だ。
佐川で働く資金をためて創業して、血の滲むような努力をして成功した人だ。
この発言はまさに自分の経験から来ているもので、
そして議員になったからには再びそれに挑む意気込みは持っているだろう。
彼は人間によくありがちな虚栄心はもっているだろうが、言っていることとやっていることを切り替えるような狡猾な人物には思えない。
そう言われれば、本当に雑巾がけから初めて、徹夜して仕事をするだろう。
そして、自分もそうできるのだから誰だってできるだろう。そうあるべきであると思ってしまう他者性の欠如に問題があるのだとおもう。
もし、泥のように働け論調が活発化した時にそれを成し遂げてしまったら、それこそ彼のやり方に自信を与えてしまう。
そのような人を煽るようなネガキャンではなく、
ブラック企業が如何に問題なのか、社会的にどのような影響があるのか、そして一生懸命働きすぎる人がいることが周りにとってどれほど不幸かということを理性的に解いて、
それが新しい価値観に変わるようにならなければならない。
渡辺氏が昼食をとっただけで、嘲笑するようであれば何も影響はおきないし、
むしろかえってむちゃくちゃな反渡辺がおかしいことを言っているくらいにしか思われない可能性がある。