刺青・タトゥーをしている人、入浴禁止の温泉について

マオリ族伝統のタトゥーをしている人が温泉に入れなかったというニュースがあった。

先住民族マオリ女性の入浴拒否 北海道・石狩管内の温泉、顔の入れ墨理由に-北海道新聞[道内]

日本では刺青はヤクザというイメージが強くあるので、暴力団関係者を入場させたくない浴場などはよく禁止している。

だれけれどもこの規則というのは、運用を誤ったら問題を起こしかねないというか現に問題がでてきてしまったのだが、
どのレベルまで適用するかというのはかなり難しい問題だ。

客の安全と安心のために暴力団関係者を入場させないというのは分かる。
刺青・タトゥーをしている人 = 暴力団関係者が完全にイコールで成り立てばいいけれど、そうではない。

※当記事では暴力団と記載しているが、暴力団と犯罪傾向のある人たちを含めて暴力団としている。

ベン図に表すとこんな感じだろう。

余白広くなっちゃったな。

暴力団を除こうとしても、見た目暴力団ではない人は入場を規制させずらい。
暴力団関係者立ち入り禁止のように書かれていても、見た目強面だからといって入場お断りできないだろう。

また、刺青・タトゥーは価値の多様化や外国からの文化の流入で一般の人もするようになってきた。

暴力団で刺青をしているというステレオタイプな人は除けても、それ以外の無辜の人も規制されてしまうし
お断りしたい人でも刺青をしていなければ入ってきてしまう。

堅気証明書なんてものがあれば別だが、
結局は怖いか怖くないかの判断は見た目で行うしか無いわけだからこのような規則にせざるを得なかったのだろう。

暴力団風で且つ刺青・タトゥーの人の入場禁止というルールにしたところで、暴力団かどうかの判断はスタッフの主観によるものになってしまうので、
暴力団じゃないのにそう勘違いされた人や、暴力団だがそうではないと言いはる人などトラブルの元になってしまうのだったら
100%禁止にしたほうが運用は楽だし、曖昧さがない分客側もわかりやすく納得しやすい。

そもそも入場規制の規則は正しいのか?

そもそも、暴力団と言えども銭湯に入れないようにするのは正しいことなのだろうか?

もちろん、銭湯は営利企業だし、堅気の雰囲気じゃない人たちがたむろするようになったらば、売上は落ちるし
客の安心も損なわれるのだから店としてはそのリスクを回避したいというのは承知している。

このように暴力団でいることで割に合わない社会になって、犯罪組織が弱体化していくという意図もあろうだろうし、
その意図も価値があるものだというのは分かる。

そしてヤクザ的な見た目で恐ろしさを感じることが多いのだから、その象徴である刺青を禁止するというのは今ならば有効だろう。

だが、明確な犯罪行為をしていない人を全部拒否するというのは、行きすぎれば差別に繋がってしまう。

暴力団が刺青を脅しに使ってきたという歴史があるから、一般では双方は密接につながっている印象は根強くあり、
反社会的な印象を持っていることは否めない。

「外人だから〜」とか、「精神疾患だから〜」、「LGBTだから〜」など、その属性を持っている人のごく一部の人の印象だけで全体の人の印象を悪く捉える人が多い。
(外国人窃盗団とか、一部の衝動的な犯罪を犯す精神疾患の患者、LGBTは理解できない人にしてみれば充分怖い存在かもしれない。)
その印象だけで否定をするというのは差別だ。

これらの例は、本人の意志でなったものではない先天的なものではないかと言われるかもしれないが、
本人の意志でなったものでも差別はしてはいけない。
食肉加工とか葬儀屋とか未だに職業差別があるが、「悪く言われるのが嫌ならば転職すればいいじゃない」というのは乱暴すぎる。

同じように、「反社会的と思われたくなければタトゥー消せばいいじゃない」と言われてもこのようにマオリ族のような伝統や、信仰による刺青などもあるし、
シンガーや芸術家などの職業上している人もいるわけで、一部の印象から全体の人の印象を決めてしまうのは乱暴だ。

刺青禁止は本質を見誤っている

反社会的行為をする集団や、反社会的行為を禁止し、そうさせないということが最も大切なことだ。

人は見た目や外側を重要視する傾向があるので、ヤクザが象徴的に刺青を使ったという事もあるが
刺青が悪い人というイメージがついてそればかりが禁止される。

だが、それでは暴力団排除にはならない。
最初のベン図であったとおり規則をすり抜ける暴力団員もいるだろう。

AはBをする傾向があるからといって、Bをする傾向がある人はAであるわけではない。
本来ならばA・つまり暴力団を禁止にする必要があるわけだが、B・刺青を禁止にしたところで暴力団を排除できるわけではない。

大阪市の刺青・タトゥー問題があったが、
刺青・タトゥーをしているからと言って問題のある職員とは言えない。
逆に、一見真面目そうに見えるのにしれっと着服している腐敗職員もいるだろう。

問題は、見た目に矮小化させてしまうことだ。
刺青を禁止したとか茶髪を禁止にしたとか、服装の乱れを直したとか、それは外見の問題であって、
不良行為や犯罪行為の原因ではない。
だが、外見の問題と矮小化してしまった結果、犯罪行為の原因を見過ごしてしまうことになってしまうだろう。

銭湯に話を戻すと、
暴力団や反社会的な行為をした人を排除し、近づけさせないということが重要であって見た目は問題ではない。

とはいっても、客商売だし
お客の印象というのも重要であるから、刺青全面禁止にせざるを得ない面もあるだろうし、
暴力団の反社会的行為をした人を出禁にしたとしても、結局は事後の対応であるから、企業としてはリスクを未然に防ぎたいというのはある。
それは仕方ない。

だが、十把一絡げに刺青・タトゥーを禁止にするのではなく
マオリ族のような人や倖田來未のような人くらいは禁止にしない程度の柔軟性は欲しいところだ。

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