つい昨日(2015年11月21日)公開になった劇場霊を見に行ってきた。
劇場霊は中田秀夫が監督している作品。
この監督は女優霊、リング、仄暗い水の底から などホラー作品を監督することで定評のある人。
ちなみに来週の世にも奇妙な物語の『自己物件』というエピソードは中田監督がつくったそうだ。
劇場霊というタイトルからして女優霊と似ている怖い雰囲気を醸しだしており、ポスターをみればぱるるが全面に出ている印象を受けるが、
きっとアイドル全面押しホラーとはちがって過去の映画と同様に怖い映画だろうと思って見に行った。
一人で見に行った。
連休の真ん中、12:50開始。
11月は毎年映画館は暇な時期だ。
12月には大型作品が控えており、ハリウッド系の大作の公開は今は少ない。邦画はこの時期に公開されるがどことなく夏休みと冬休みの中継ぎのような印象を受けるのがこの頃だ。
近所のイオンシネマに行ったがやはりこういった時期ということもあってチケット売り場も閑散としていた。
しかしその時期だとしても人が少ない。
もっともどの映画も開場の時間になっていないからだろう。
早く来すぎたのだ。時間がくれば人も集まる。
しかし、12:42 開場しても人が来ない。
全く誰もロビーに居ない状況で会場内に入る。
都心部ではないし、ホラーだ。元々人は少ないのだろう。
劇場内をのぞいたが開場してから一番乗りで入ったのでもちろん人は居ない。
50分にでもなれば人が来る。
しかし一向に人が来る気配が無い。
いやいやいくらホラーといえども休日の昼間に自分一人なんてことあるのか?
遂に50分になった。
いや、これはこまる。ホラー映画なら本編開始前の特報でもホラーのお知らせが入る可能性がある。
こんな広い(250人収容)暗い空間でたった一人では堪えられない。
荷物を置いて廊下に出る。
ホラー映画だからというわけではなく、もしコメディでも僕はこの状況は困っていただろう。
この映画館は妹が勤めている劇場でもある。
妹が言うには怪異がよくある劇場であるという。
劇場や映画館はそもそもよく出るといわれて、このイオンシネマもご多分にもれずその手の現象が起こっていたそうだ。
ある時、最後の回が終わってお客さんがゾロゾロと出て行く。
スタッフは最後に中を確認して清掃をするそうだ。
同じ頃、映写室も最後の片付けをしていた。
そして片付けが終わったあたりに何の気無しに映写室の窓から劇場内を見ると、人影がみえた。
ほぼ真ん中に立っている。
最後の確認や清掃をしていないのかと映写スタッフは思い無線で担当スタッフに伝えた。
すると清掃も行ったという。
しかし清掃後に不届き者が忍び込んできたのかもしれない。
映写スタッフは確認のスタッフが劇場内に入るまで映写室の窓から劇場内の人影が逃げたり隠れたりするかもしれないとじっと見続けた。
しばらくすると確認のスタッフが劇場内に入ってきて、グルッと中を見渡している。
そして映写スタッフに無線が届く。
「中にいる人ってどこに居ますか?」
真ん中に立っているし、位置的に確認に来たスタッフからも見える位置だ。
映写スタッフは居る場所を伝えるが全く確認に来たスタッフには見えていない。
すると聞きつけたベテランスタッフが映写室に来て、「こういうことたまにあるから、気にしないでもう上がって」と伝えて帰っていった。
僕はそんな話を聞いているのだ。
ホラーじゃなくてもよくわからない存在と共に一緒に見たくはない。
少なくとも怪異が起きるなら一人より二人がいい。
廊下に出るとちょうどスタッフがいたので、「この回は僕だけですか、ホラー映画で一人むっちゃ怖い」と助けを求めた。
そしたら無線でチケットの販売状況を聞いてくれた。お客の要望に答えてくれて本当に嬉しいサービスだ。
どうやら僕を含めて4人入る予定らしい。
4人…公開したばっかりの休日でたった4人…
でも良かった一人じゃなかった。
でもそれでもまだ他の客は来ていない。
買ったはいいけれどお客が少なすぎて逃げた客かもしれない。
扉の前でチケットもぎりの方をじっとみて、客が来るかどうか確認した。
遠くの方から「七番スクリーンです」という声が聞こえた。七番スクリーン、劇場霊のスクリーンだ。
良かった人が来た。
扉の前で待っているのも恥ずかしいので、救世主(客)が来る前に自分の席に戻ることにした。
幸い本編も始まっていなかったし、怖い映画の特報でもなかった。
来たのはオッサン一人。
しかも自分の席からもだいぶ遠いところに座った。
でも、それでも安心感は非常に大きいものだった。
しばらくすると40代くらいの夫婦も入ってきて、この人たちは自分の席のすぐそばに座った。
奥さんのほうが、「こんなに人少ない・・・」とか驚いていたけれど
最初から居る僕にとっては心強い人数だ。
本当にありがとうという気持ちで映画を見ることができた。
それで、映画の感想だけれども
それほど怖くはなかった。
一人であの劇場で見たいとは思わないけれど、臆病者の僕が目を覆うシーンもなく安心して見れるホラーだった。
ホラーというかサスペンス要素のほうがおおい。
まず良かった点。
昨今のホラー映画はファンタジー風味が多かったりお化け屋敷的にただ驚かすことに終止する作品が多い。
そういった映画だと不気味さや不思議さを強調するあまり、不可解な設定になったり必然性のない展開になりがち。そういう場合は幽霊やお化けに過剰演出をさせることでかえってキャラクターが際立ってしまって不気味さがなくなる。そうして演出は大味になって話も終始恐がらせることだけになってしまう。
一方、劇場霊はそういうことは少なかった。
ぱるる扮する新人女優が舞台のオーディションに受かって、主演女優の諍いや演出家のセクハラなどもありつつ次第に怪異に巻き込まれていくというのが大まかな流れ。
その怪異の中心として人形が関わってくるのだけれども、三流ホラーだったら人形のこと中心に話が進んでしまうが、
この作品はそんなこともなく、ちゃんとオーディションから稽古にはいり怪異以外でもぱるるが困るということもあり、そういう前提が描写されているのでリアリティも保証されている。
あとはあまり前提知識を入れなかったからかもしれないが、人形のキャラクター性をあまり感じないまま不気味な存在として見ることができたので終始怖さを感じることはできた。
でも、改めて映画の宣伝を見ると人形にキャラ付させてしまうプロモーションをしているのでそういう誤った広告代理店の戦略にハマった人は怖さが半減してしまうだろう。
特にTwitter公式アカウント…何だよあのアイコン。
人形の存在はむしろ最後まで隠しておくべきだった。
もしくは人形というキーワードだけで宣伝しておくべきだったのだ。
映画が気になってそういうプロモーションを見てしまった人は不幸だ。
だがそれはしかたない。プロモーションの不幸は置いておく。
映画自体はそれほど怖くはない。というかビックリさせられることはない。
基本的にサスペンス風味だ。
前半の不気味さと怪異を信じてもらえないもどかしさはいい感じになっている。
一方足りないなとおもった点
物語の展開の必然性があまり感じられない。
怪異が起きた原因や理由は詳細は欲しくはない。
でも、展開上それが明らかになるのだけれどもその明らかになった原因がなんでこの怪異の始まりなのかというのがよくわからないし、
原因を知ったことで怖くなるか、謎が溶けてホッとするかのどちらかであればいいけれど、そのどちらでもない。
だから怪異の前提が展開上の必然性を感じられず、後半はダレてくる。
この映画は最初から抑えた演出で進んでいくので、後半この必然性が感じられないことで本当に怖く無くなってくる。
人によってはギャグに感じることもあるかもしれない。
僕の総合評価10点中は6点。
途中でやめないレベルだけれども、ホラーとしては怖くはない。
世にも奇妙な物語などの地上波で見れれば満足するレベル。
でも、映画館でみても損したとも感じないレベル。
ちなみにプロモーションをあらかじめ見た上で映画を見たら、評価は4点になっていた。