【ネタバレ】シン・ゴジラのどこが良いか、あるいは弁明

前回書いたとおり、シン・ゴジラを見て僕は最高傑作と思ったが、
特撮好きやアニメ好きのいわゆる分かる人には分かるようなものだと思ったが、ほうぼうから同じような評価がでてきて、僕らが向いていた方向は世間とズレていなかったんだなと思った。

でも、やはり人の好き好きはあるわけで
歴代ゴジラ作品で何が最も好きだったかということもあるし、そもそもどんな映画が好きかというのでも全然違う。
特にシン・ゴジラはエヴァっぽさというか庵野秀明の作家性がでているし、庵野秀明の作品はだいたい庵野秀明しちゃうので、好き嫌いはだいぶ分かれる。

シン・ゴジラが嫌い・わからないという人には、セリフ多くてテロップ多くて見づらい
「わからないお前のセンスがおかしい」とか「その感性が邦画をダメにしたとか」言っちゃう人もいるけれども
その人向けじゃなかったというだけなので、僕は無理に勧めることはしない。

でも、きっとシン・ゴジラが嫌いな人のなかにもシンゴジラ絶賛バズが広がっているのをみて、何が良いのか気になる人もいると思う。
もちろんシンゴジラ好きな人も、他の人は何が魅力に映ったのか知りたい人もいるだろう。

そこで一つのサンプルとして、観劇後一週間シンゴジラのことしか考えられなくなるほど衝撃を受けた僕は一体なにに満足したのか、
そしてシンゴジラが嫌いな人が嫌いそうなポイントは僕にとってどう魅力的なポイントになっているのかを語っていこうと思う。

本当は観劇後の喫茶店で熱弁する内容なのだが、聞いてくれる人がいないので
独り言するのも辛いからブログに書いておく。

セリフ多くてテロップ多くて見づらい

そこが良いんだ。

これをエヴァっぽいという人もいるけれど、エヴァというより庵野秀明の作家性の一つだ。
トップをねらえ!でもエヴァでもやたら長いテロップが出てはすぐ消えていく。

このテロップは岡本喜八の影響だし、エヴァのタイポグラフィは市川崑の影響で、
そういう影響を受けた映画のシーンをところどころに入れ込んでくる。

基本的に好きなシーンを映像にしたいからその前後の設定やストーリーを作っていると思えるフシがある。
エヴァだって、哲学っぽい場面と巨大な人型と怪物とメカがいっぱいのアニメが撮りたかったんだとおもう。

つまり、シーンの雰囲気が重要で、テロップに書かれていることや流れるようにとめどなく聞こえてくるセリフのほとんどは必要なものではなく、その緊迫した雰囲気と仰々しさを感じて
テロップからシーンに登場する事物がすごそうだと分かればいい。

その雰囲気を楽しむのがまず最初。

二回目に見た時はそれぞれに注意を払う。
ただそれっぽいテロップやセリフがあるだけじゃなく、ちゃんとしているんだ。
矛盾のない深い設定がそこでこっそりアピールされているんだよ。
まるで無地の服で襟の裏だけ柄があるような、そういうチラって見えるところに誤魔化していないディティールがあるんだよ。

三回目は二回目に気づいたことを踏まえてまた注意深く見る。
そして何度も何度もみても分かってくることが増えてきて、面白いんだ。

大体何回か見て味が深まるような作品が多い。
ビデオ時代よりあとにでてきた作家だからなのか、何度も何度も見直すことをできるようになっている。

会議ばかりでつまらない

ここの楽しみ方は、会議の内容ではなく切羽詰まった雰囲気を楽しむことが一つ。

あと、シチュエーションコメディ的な笑いどころがいくつもあった。
こういう微妙な笑いがいいね。
みんな真面目にやっているのに、それがどこか滑稽で、泣き笑いするような感じ。

特に首相のヘタレっぷりと官房長官の押しのところ
「今決めるのか?」ってところお前首相だろ!!って突っ込みたくなるし
会見中に上陸して「蒲田に!?」とかタイミング悪すぎて実際にニュース映像だったらニコ動の素材になるレベル。

三人の学者のシーンも秀逸(なんか東方の三博士みたいな書き方だな。MAGIより役に立たないが)
毒にも薬にもならないことしか言わない上に「そもそも…定義とは・・・」
定義論まで言っちゃう!??と突っ込まざるを得ない。
特にあのシーンはスピーディ展開の中で急ブレーキをかけるような学者の発言で、一気に脱力。

映像的スペクタクルさはないが、
緊張、笑い、呆れ、スピード感、脱力、混乱が伝わってきて精神的にはだいぶスペクタクルだと僕は感じた。

 

人間のドラマがない

あるよドラマ。
感情的に押し出していないだけで、所々にその人の個性が見えてくる。

特に好きなのは、大杉漣の首相だ。
決断ができなくて官房長官や防衛大臣に押し切られる形で承認をしたり、適当なことを言ったりと冒頭無能っぷりをだすけれども
僕がこの首相を好きになったシーンは、一番最初のゴジラ上陸でヘリの近くに民間人がいるから発砲を許可しなかったことだね。

僕と同じく高評価を下した妻の場合はここで「さっさと撃てよ」とおもったらしいが、僕は逆に好きだった。

平和ボケって言ったらそれなんだろうけれど、人の善さというか国民を大切にしているなというか、根はいい人なんだろなと思った。
きっとあの世界でも支持率は低そう。日和見総理とか閣僚の言いなり総理とか言われてるんだろう。
結果的にゴジラ討伐の絶好のチャンスを逃したのかもしれないけれど、それはそれとしていい人なんだなというのが分かる。

特に官邸を最後まで脱出しなかった責任感。
この人そうとう良い人だよ。

平泉成が演じる農林水産大臣 総理代理も良かった。
余り決断をくださないタイプで、ぜんぜんリーダー力を発揮しない。
そもそも閣僚ではあるが、仕方なく総理になったタイプで党の中でもそんな重要なポジションではないかもしれない。
もしかしたら参議院議員とかかもしれない。
でも、避難民のことを考え冒険とも言える決断を下す。そのためのリーダーに必要なことをちゃんとする。
感情を出さないけれど静かな憂慮をもっていて、静かに決意するシーンはドラマチックだった。

統合幕僚長の責任感あるセリフもすばらしい。
自分の仕事に誇りをもってるだろう。
タバ作戦での悔しさ、都心を守れなかった悔しさ。
米軍や国連軍に良いようにされてしまう辛さ。
そういうのは絶対あったと思う。
そして自分たちでその雪辱を晴らせる可能性が降ってきたのは相当嬉しかっただろう。
嬉しくもあり怖くもあり、責任感も相当感じただろう。
そういうものを表に出さず「仕事ですから」というセリフ。
ああ、多くを語らない自衛官。シビリアンコントロールされる自衛官。静かだけれども熱い。山のようにドッシリとした熱い男だ。

片桐はいりのおばちゃんはあれは、市井の人々の象徴なのかもしれない。
自分の出来ることを出来る範囲でサポートする。
小さな募金とか、ボランティアとか、そういった小さくても尊いサポートが見えてくる。

シンゴジラはリアル路線に舵を切って、政府の仕事以外の夾雑物はかなり取り除いている映画だけれども
その中の人間の静かながら見える個性、感情、決意などが見える。

喜怒哀楽はセリフで説明するものでもないし、喜怒哀楽以外の感情もあるのだけれども、大げさなドラマだと殊更説明的に喜怒哀楽を表現するけれども
表には見せないでそっと気づかせてくれるシーンはこれもまた強烈なドラマだ。

リアル路線なのにリアルじゃない攻撃が変

あれだろ。
無人在来線爆弾のこと言ってんでしょ。

あれはロマンだ!!

ロマンがリアルに勝った結果だ!!

庵野秀明はともすれば世界観を壊しがちなトンデモ兵器を所々に混ぜてくるんだ。
エヴァの武装ロープウェイとか、元箱根児童公園内第3砲台とか
児童公園に大和の主砲が置いてあるんだぞ!!
こんな変なものがたまにでるけど、これはロマンなんだ!!

シーンを撮りたいのが先行しているところがあるが、それが良い。

アンバランスに感じてしまう人がいるのは否めないけど、
そこはスパイスとして楽しんでほしい。

庵野秀明は鉄道ファンだし、エヴァでも相当いろいろでている。
そういえばモノレールの基地がシンゴジラでもでていたが、モノレールも好きなんだろうな。

確か54年の映画で鉄道がゴジラの足に追突しちゃうシーンがあった気がする。
それのオマージュかな?

10式戦車の攻撃よりなんで在来線のほうが強いんだよとか思うかもしれないが
在来線のほうが強かった!それでいいんだ。

あのシーンを楽しみ、無人在来線爆弾という言葉を声に出して楽しむ。

こういう演出は癖があって好き嫌いが別れるけれども
おそらくそこが嫌だと思っている人のそのポイントが、まさに僕らがいいねぇーって言っちゃうポイントでもある。

「ゴーヤの苦さが美味しい」みたいなものではあるのだけれども、
そういう人もいんだ。
それがオタクしぐさなんだ。

明後日また見に行くので、二回目の視聴で楽しむポイントを抑えて来ようと思う。

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