大学四年のときの話。(関西圏では四回生っていうらしいね)
僕は着実に必修科目を修め、単位も三年時に卒業必須単位を越した。
四年時には残すところあと卒論だけという状況になった。
ところが僕は、大学が大好きなタイプの人間だったので、単位になろうがなるまいが興味のある科目を履修した。
履修できないものでも潜り込んで参加した。
さすが文学部、何故か高校生(JK)がいたりして結構カオスな講義も多かった。
外国語系の学科ではないので、英語は普通の人は二年で取り終わってしまうのだが、
せっかくなので、毎年英語とドイツ語の授業は取っていた。
三年時、四年時に取れる英語の授業というのは、英語学科の学生ならば必須科目になるもので、他学科の学生もとれるというものだった。
仮に英語Aという授業名にしておく。
僕は四年時の履修登録でその英語Aを選んだんだ。
そしたらシラバスに「英語Aをを選んだ学生は自動的に英語強化コースになります」と書いてあるの。
英語強化コースってなんだ!っておもったら、英語学科の必須科目の英語教科が増えるだけ、つまりその英語Aをが必須科目になるだけのコースだった。
履修科目をもう一度見てみると英語Aをになっている。
就活と卒論に忙しい時期に必須科目を増やしてしまったのだ!
適当に行ってイギリス紳士のジュード・ロウ風の先生と英語で話すだけの授業が、絶対に落とせない授業に変わってしまった。
だいたい英語学科の学生だって三年時に修了しているような科目だ。それを無意味にこのぎりぎりの時期に必須科目にしてしまった。
どうすれば必須科目にならなかったのかとシラバスを見てみると、どうやら英語Bというちょっと名前が違うが同じ内容の授業を履修すれば良かったらしい。
なんだそりゃ。同じ内容の授業を必修かそうじゃないかを選べるというシステム誰が考えたんだ?
大学のよくわからないシステムのために僕は一年間、木曜日に用事を入れられなくなってしまったのだ。
ちなみに通年なので、卒業までジュード・ロウと英語やらなければならない。
ところが、後期に入ったときに時間割を見てみると英語Aを英語Bに名前が変わっている。
教務課に行ってみると、英語強化コースのチェックボックスにチェックを入れてないで英語Aを選んだ人は必須科目にする意思が無いと判断して、英語Bに自動で変えたとかいっていた。
ありがてぇ…でも、はじめからそのコースなくせよ。
いや、だが教務課の戯れで必須科目が無くなっただけで、本来英語Aを選んだわけで、もしかしたら急遽必須科目に戻しますとか言わる可能性もある。
念の為に単位は取っておこう。
僕はそう決めた。
英語の授業なのでコミュニケーションを主に行うので、教室内での雑談も多い。だから、学部何処?とか何年生?とか話していると
皆三年生が多いのだけれども、一人だけ僕と同じ四年生がいることが判明。
そのA君は前期はあまり来なかったけれど後期はチョクチョク来るようになった。
A君は結構引っ込み思案で若い女の子が多い教室ではあまり馴染めていなかったんだけれど、男で同じ学年でってことで僕に頼るようになってきた。
彼は僕と同じようにうっかり英語Aを履修してしまったやつなんだけれど、しかもなぜかうっかり英語強化コースにチェックを入れたままにしていたらしい(一年時の希望あふれる時に先走ってチェックしたまま修正せず四年になったため変更効かなくなったらしい。)
Aくんは前期まで必須科目じゃないと思っていたのに、後期から気づいてとても焦っていたよ。
テストはペアでディベートのような物をするやつだったんだけど
「君だけが頼りなんだよーテストの時にペアになって…おねがいします…他の人はリア充ぽいし苦手だよー」
彼はすでに内定も取っていて、留年はできないという状況…そのうえなぜか英語がそれほど得意でない上にちょくちょく遅刻をするという意思の弱い男でもあった。
可哀想に思った僕は、半分彼のために英語に出るようになった。
電話番号を交換して、英語のテストのための練習をしたり(約束したのに来なかったり…)
しかも前期の出席日数が足りないから本来ならばもう単位は無いはずなのに、特別に良い発表が出来れば単位をくれるということになった。
他人の卒業も背負うことになってしまった。
四年生になれば卒論提出したら皆卒業ムードで遊びまくっているのに、コッチはそれどころではなかった。
もっとも、僕も単位を取って置かないと不安というのもあった。
英語Aのテストは最終授業の日だった。
準備が出来た人から次々とジュード・ロウの前で発表して終わり、僕達はAくんの準備が整わなかったので結局最後になった。
もうよく覚えていないけれど、たどたどしい英語でお互い話し合った。
教室にはもう誰も居ない。ジュードロウと僕達だけだ。
反応もないなか10分程度の発表は終わった。
ジュード・ロウはタダ一言OKといった。
そして僕達の大学四年は終わった。
その後彼とは連絡を取っていない。
単位がとれたのかはわからない。
これが、僕の大学生活最後の授業だった。