負の外部性とブラック企業

経済学部ではなく、また私生活でも経済の事は不勉強なので、外部経済のことについては大学受験の時に政経でやったなぁというくらいしか印象になかった。
その時は養蜂業者と果樹園の例と公害の例で習った。

外部性というのは他の経済主体に対して影響を与える事。
養蜂業者はミツバチを使って蜂蜜を作っているけれども、その生産過程においてミツバチは花粉を運んでくれる
それによって農家は得をする。しかも、その対価を養蜂業者に払わなくていい。
こういう外部の人に得をさせるのが正の外部性。

逆に損をさせるのが負の外部性だ。
負の外部性については公害が例に上げられていた。
生産過程で排出される汚水などで、外の人に損をさせている。
健康が損なわれ一般市民がその会社の経済活動の犠牲になっている。
そしてその対策のために公費が支払われることになる。

ブラック企業というのは間違いなくこの負の外部性がある問題だ。
『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』という新書を読んだのだが、
厳しい条件がかせられる解雇をせずに、意図的に従業員を鬱病に罹患させ相手から退職させるというブラック企業が少なからずあるそうだ。

また、意図的ではないにせよ厳しい労働条件で鬱病を発症させたりするなど、
若い人を使い捨てのように使用してしまえば、新卒至上主義が未だに根強い日本で再び労働者が雇用されることが難しくなる。

このような人たちを救済している医療や傷病手当、生活保護などは公の金を使って運用されているわけで、
我々国民にコストを転嫁させてブラック企業は理を得ていると言えるわけだ。
公害と同じようにこれは負の外部性の典型だ。

コモンズの悲劇にもという例えがあって、これもブラック企業に当てはまる。
共有地で家畜を育てる農家が複数いて、皆が得をするために(牧草はタダだし)より多くの家畜を育てるようになると
草が生える速度よりも家畜が食う速度が上回って共有地は荒廃して、農家は撤退して後には何も残らなくなる。

労働者は有限だけれども、このように大量採用をして使い捨てのようにしていれば
そのうち健康で働ける人も少なくなる。また、仕事への熱意というのも下がってしまい効率も下がってくる。
ブラック企業が憚り、労働者の単価がどんどん下がっていけば企業にしてみれば得をするが
外部へコストを転嫁して利益だけ追求していけば、経済は行き詰まっていく。
結果としてブラック企業を含めた全体が損をする。

確かに今後世界はフラット化していくし、企業は厳しい世界経済の中で生き残って行かなければならないのは事実だ。
だが、労働者を不当に安く働かせて「成長しなければ死だ。年収は100万になる」という事を嘯く企業家は社会性のある人ではない。
フラット化される社会が事実だとしても、市場の失敗を避けるようにすることが地位ある人の責任であるとおもう。

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